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 現行型の15代目クラウンは、既にオーダーストップとなり、間もなく発表される(とみられる)新型を待つばかりとなった。1955年から日本の自動車文化をけん引してきたクラウンが16代目へと生まれ変わる。

 新型に生まれ変わりクラウンは、どう変わるのか。クラウンは、時代の変遷とともに、その姿や役割を変えつつも、「クラウン」であることにこだわり続けている。

 また、今回の変化をクラウンユーザーや、長年に渡りクラウンを販売し続けてきた販売店はどう受け止めているのか。取材を通して明らかになった、新型クラウンに対するユーザー・販売店の受け止め方を考えていきたい。

文/佐々木亘、写真/TOYOTA、予想CG画像/ベストカー編集部

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発表時期は6月で決定! それでもまだ見えぬクラウンの姿

2018年にフルモデルチェンジした15代目クラウン。歴代クラウンのイメージを大きく変え、欧州メーカーのセダンに近い雰囲気を醸し出した

 オーナーの若返りをテーマに掲げ、2018年に登場した15代目クラウン。ニュルブルクリンクで走りを鍛え、シックスライトウィンドウを採用した伸びやかなエクステリアデザインは、クラウンのイメージを大きく変えるものだった。

 伝統の「ロイヤル」そして人気の「アスリート」のグレード名を廃止し、グレード体系も一新している。おなじみのクラウンとは大きく方向性が変わり、欧州メーカーのセダンに近い雰囲気を醸し出している。

 これまで、クラウンは4年~6年程度のサイクルでモデルチェンジを繰り返してきた。2018年6月に登場したクラウンは、平均的なモデルサイクルよりも少し短く、役割を終えることになる。

 新型登場のタイミングに関しては、おおよそ販売店に連絡が入っているようで、16代目は6月発表となりそうだ。クラウンオーナーに対しても、少しずつ案内が始まった。

 しかし、それがどのようなクルマに仕上がっているのか、発表予定まで約2カ月を切った現在も、わかっていない。様々な情報が飛び交うなかで、クラウンオーナーや販売店は、新型の登場をどう見ているのか。筆者は、現場で取材を進めてきた。

懐疑的なユーザーの反応? 受け止め方は千差万別

 市場の変化やトレンドの移り変わりに対して、クルマも大きく変化しながら平成の時代を駆け抜けてきた。そして時代は令和となり、今後も様々な変化が自動車社会に対してもたらされるだろう。

 そのなかで、「らしさ」を残しつつも変化を続け、時のユーザーから賛否の声を受けてきたクラウン。

 15代目クラウンで行われた若返りについて、ユーザーは一定の評価をしているが、硬く引き締められた足回りや、デザイン重視で居住性が落ちたようにも見えるリアシートに対しては「クラウンらしくない」と、否定的なコメントも目立つ。

 ここ数年でモデル廃止やSUV化など、様々な情報が飛び交ったクラウン。フルモデルチェンジという結論で落ち着いたものの、新型クラウンは、今、ユーザーの目にどう映っているのだろうか。

 長年、クラウンを愛し、乗り継いできたオーナーたちは、新型の登場を懐疑的にみている。モデルチェンジを喜ばしく思ういっぽうで、15代目から既に、クラウンではないと感じる部分が多かったという。

 クラウンのふんわりとした独特の乗り心地、アクセルを踏み込むと一瞬リアが沈み込む、独特の動きが、現行型では感じられなくなったと嘆いていた。

 16代目では、ボディタイプがセダンではなくSUVへ変わるという話を聞き、「もうクラウンという名前でなくてもいいのでは」と、諦めとも見える苦笑をしていたのが印象的に残る。

 いっぽうで、旧世代のクラウンやマークX、ヴェルファイアなどに乗る若年層ユーザーからは、クラウンSUVへ対する問い合わせが増えてきていると話す販売店が多かった。非常に大きく取り上げられた、クラウンSUV化の一報は、SUV需要を大きく支える世代に、しっかりと届いているようだ。

 15代目で打った布石が、モデルライフを終えようとする今、実を結び始めている。トヨタが掲げた「クラウンの若返り」に関しては、様々な情報が飛び交うなかで、一定の効果を見せ始めていると考えて良いのかもしれない。

詳細が分からぬまま、案内をスタートする販売店

次期クラウンの情報は、6月末に登場というスケジュールのみが公表されている(予想CG画像:ベストカー編集部作成)

 混乱が収まらないのは販売店だ。2月上旬に突如、車種切り替えスケジュールにクラウンが登場し、「〇モ(フルモデルチェンジを指す)」の文字が躍った。立て続けにセダン型からリフトアップし、HEVのAWDモデルへ変化すると伝えられる。(しかし発売日は未定)

 幾ばくもなくオーダーストップとなり、新型を販売する準備へ入っているが、販売店には肝心の情報が、まだほとんど届いていない。

 唯一といっていい情報は「6月末に登場」というスケジュールだけだ。しかし現状はこれで動き出さざるを得ない販売店。特にクラウンを専売してきたトヨタ店にとっては、販売店を大きく支えるクラウンオーナーへの対応となる。全チャネル併売化後、初のモデルチェンジとあって、顧客の他社流出を避けようと囲い込みに必死だ。

 販売店上層部からは、「可及的速やかに新型の案内をして、見込み客を作れ」と指示が出るいっぽうで、販売現場では「何を案内すればいいのか。我々が何も知らない状況では、クラウンオーナーに電話するのも失礼になる」と、対応に苦慮する姿も多く見かける。

 結果として「6月末に新型が出ますけどいかがでしょうか、詳細はまだわかりませんが、追ってご連絡しますので」と、かなり苦しい誘致活動を強いられているようだ。販売店の顧客対応負担は非常に大きくなり、このままではせっかく築き上げた信頼関係を揺るがす事態にもなりかねないだろう。

 見切り発車でクラウンの販促活動をすることは、よくあることだが、ここまで情報が錯綜し、絞られている状況は、筆者も見たことがない。

 部品供給不足や生産工場の停止によって、新車が販売店に届かない状況は、既に常態化しているといっていい。「クルマが来ない」うえに、「情報も来ない」となると、販売店(特に顧客と最前線で接する営業マン)への負担は計りしれないものがある。

 歴史と伝統がある車種だからこそ、それを支えてきたユーザーや販売店を、ないがしろにするべきではない。ここまで隠し通して、トヨタはクラウンをどうしようというのだろうか。

 情報公開まであと少しだろう。トヨタが仕掛けたクラウン戦略の全容が、もうすぐ明らかとなる。

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