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EV普及が地方で静かに進行中…その意外でキビしい理由とは クルマ界近未来ニュース3選

 本誌『ベストカー』にて、毎号テック系の最新情報や気になる話題をお届けしている「近未来新聞」。

 今回はEVの普及が地方で進行中のなぜ、EVのバッテリー交換ビジネス、インディカーを使った無人車レースなどの話題をお届けします!

※本稿は2022年2月のものです
文/角田伸幸、写真/ベストカー編集部、AdobeStock(トップ画像=Caito@AdobeStock) ほか
初出:『ベストカー』2022年3月10日号『近未来新聞』より

【画像ギャラリー】「次世代自動車普及が進む都道府県」、「ガソリンスタンドがない町村」も掲載! 各トピックをギャラリーでチェック!(7枚)画像ギャラリー


■意外な理由が追い風に? EV普及が地方で進行中

 EVへの関心は高まっているが、実際のところどこで売れているのか。そんな調査を日本経済新聞がまとめた。

 調査は、次世代自動車振興センターがEVなどの購入時に支払う補助金の交付台数をもとに、人口1万人あたりの普及台数を都道府県別に割り出したもの。

 ランキングの詳細は画像ギャラリーにてご確認いただきたいが、「平均所得が高い都市部で普及が進んでいるのでは?」などという予想をみごとに裏切り、地方での普及が先行していることが明らかとなった。

 100万人都市を含む都道府県は、名古屋を擁する2位の愛知県だけ。東京都など、36位というありさまだ。

 この調査はプラグインハイブリッドや燃料電池も含んでいる点に注意する必要があるものの、過去に行われたEV単独の調査でも同様の傾向が表われている。

 次世代自動車全体の売れゆきを地方がけん引しているという傾向に間違いはなさそうだ。

 こうした状況となった理由だが、地方自治体による振興策が功を奏しているとすれば喜ぶべきこと。

 一方で、ガソリンスタンドの廃業にともなって「給油難民」となった人たちがやむなくEVに乗り換えているという見立てもあり、地方の給油所の過疎化がEVによって浮き彫りになったともいえそうだ。

 令和2年度末時点で、全国の給油所の数は2万9005件。この数字はピークだった1994年の6万421件の半分にも届かない数字だ。

廃業したガソリンスタンド。EV普及の進行はいいこと、と思いきや、地方そして日本の抱えるキビしい現実を浮き彫りにしているとも言える(画像はイメージです/Caito@Adobe Stock)

 減少数で見ると東京や大阪といった都市部が多いのだが、地方はもともとの店舗数が少ないため影響が大きく、下表のとおり全国には「スタンドが1件もないという町村」が10か所もある(こちらも画像ギャラリーに掲載)。

 こうした地域で暮らす人たちがEVに目を向けるとしたら納得はできるのだが、だとすれば購入や充電設備の設置にもう少し配慮があってもよいように思える。

 補助金の配分を見直して、給油過疎地に手厚くすることもできると思うのだが……。

■EVバッテリー交換に中国・CATLが参入

CATLのバッテリー交換システム「EVOGO」。指定場所に停めれば自動でバッテリーを交換

 世界最大の車載電池メーカーである中国CATLが、EVのバッテリー交換ビジネスに参入した。「EVOGO」という交換システムを作り、まずは中国10都市でサービスを始めるようだ。

 バッテリー交換ビジネスとは、バッテリーを充電する代わりに、満タンのものと交換してしまおうという考え方。

 バッテリーの交換拠点を整備する必要はあるものの、交換自体は機械まかせで、わずか2〜3分の作業だから、EVライフにつきものの「待ち時間」から解放されるという大きなメリットがある。

 この事業、過去には失敗例もあるのだが、近年は台湾の電動スクーターなどで普及が進み、中国ではNIOや吉利が自社のEVに採用し始めている。

 そんなタイミングで巨人CATLが動いたわけだから、今度こそ仕組みが根付くのでは? と多くの期待を集めているわけだ。

 先に述べた「失敗例」では、自動車メーカー自体がバッテリー交換に興味を示さなかったことが大きな敗因だった。しかしCATLは多くのメーカーにバッテリーを納品しているため、各社が共有できる規格を作りやすい。

 実際、今回発表された規格には、すでに中国国営の第一汽車が対応を発表しているし、それ以外のメーカーとも互換性を持たせられるようだ。

 充電に悩まされるEVライフは、意外と早く終わるのかもしれない。

■インディカーを使った無人レースがスタート

ラスベガスの無人レースに優勝した、イタリアのミラノ工科大学と米国・アラバマ大学の合同チーム。みごと優勝賞金15万ドルを手にした

 アメリカでフォーミュラカーを使った無人レースが始まった。「インディ・オートノマス・チャレンジ」という。

 このレースは、インディライツの車両を使って、超高速での自動運転技術を競おうというもの。優勝賞金15万ドル、アドバイザーに自動運転の神様セバスチャン・スランも名を連ねる本格イベントだ。

 車両(ダラーラ製)やタイヤ(BS製)、搭載するセンサー類は共通で、参加者はそれらを駆使するプログラムの出来栄えを争う。

 昨年秋、インディの聖地インディアナポリスで初戦を行った後、今年1月に家電見本市のCES開催を記念してラスベガスで第2戦を開催した。

 集まったのはバリバリのレーシングチームではなく、自動運転を研究する各国の大学の研究チーム。2台1組で追い越し競争を行い、より速いスピードで相手を追い越せたチームが勝ちとなる。

 レース中、マシンに指示できるのは速度だけで、LiDARやカメラ、レーザーレーダーの動作は、事前に作ったプログラムから変更できない。

 栄えあるレースに優勝したのは、イタリア・ミラノ工科大学と米・アラバマ大学の合同チームで、レース中の最高時速は278kmに達した。

 数十台のライバルを相手に、時速300km超のバトルを繰り広げる日も、遠くないのかも。

■そのほかの近未来系ニュースを20秒でチェック

●ステルス戦闘機のようなデザインで、世界中から予約を集めているテスラのサイバートラック。本来ならば間もなく生産が始まる予定だったが、丸1年延期になったようだとロイターが報じている。

 理由ははっきりしないが、製品のアップデートのためというのがもっぱらのウワサ。

 確かに最近、GMCハマーやフォードF150、シボレー・シルバラードといったライバルが相次いで電動化を発表しているから、商品力アップは必須かもしれない。ともあれ攻撃的なあのスタイルを早く見てみたいものだ。

テスラのサイバートラック。ステンレス製ボディや4モーターなど見どころ満載

●行政サービスのデジタル化が進み、昨年から運転免許の更新手数料などがキャッシュレス決済できるようになったが、2022年度からは車検手数料や交通反則金も同様の扱いとなりそうだ。

 この流れは「情報通信技術利用納付法案」の国会提出を受けたもので、成立すれば自宅にいながら各種料金の支払いが可能になる。今までの銀行や郵便局に出向く手間を考えれば朗報だが、反則金でポイントが貯まっても、あまりうれしくないなぁ。

新規参入が続く自動車業界だが、ドローンで世界シェアトップの中国DJIも、自動運転に参入するようだ。

 同社は昨年春、「DJIオートモーティブ」という会社を立ち上げ、自動車の無人運転に取り組み始めた。ドローンの自律航法で培った技術はさすがにレベルが高く、早くもフォルクスワーゲンや上汽通用五菱汽車などが提携に動き出した模様。どうやら「空飛ぶクルマ」も構想にあるようだ。

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