「生娘シャブ漬け戦略」との差別発言が原因となり、吉野家常務が解任された。これまでの経緯をどう見たら良いか。企業のリスクマネジメントに詳しい広報コンサルタントの石川慶子氏に、話を聞いた。
石川氏は今回の騒動から吉野家の企業体質そのものに問題があったと見る。
発言はうっかり口が滑ったというタイプの失言ではなく、吉野家の社内で隠語的に使われていた可能性があります。組織内でも使われていたのであれば、吉野家の企業風土や社内文化そのものに問題があったと言わざるをえません。
広報担当者は否定していたが、社外のマーケティング講座で紹介するということは、社内では以前から流通していた言葉と考えるのが自然ではある。危機管理広報の専門家から見て、会社側の対応についてはどうか。
(常務の)解任は当然です。会社としては常務個人の問題ということにして、早く問題を終わらせたいのだと思います。ただ、企業風土に問題があるのであれば、1人を解任しても同じようなことがまた起こりうる。吉野家はこれまでも炎上騒動を繰り返しており、社会常識からズレたところがあるのではないかと疑われています。
お詫び文では、「コンプライアンス遵守の徹底」というお決まりの文言が並んでいたが、実行できるかどうかが問題だと石川氏は指摘する。
日本企業の多くはコンプライアンスの指針などを作りはするのですが、絵に描いた餅で終わることが多いのです。表面的に形だけ整えたものの、実際には機能していないケースは珍しくありません
差別的発言により、吉野家は多くのものを失った。
女性を取り込む戦略を持っていたようですが、今回の件で完全に失敗してしまいました。企業のレピュテーション(評判)は傷つき、ブランドイメージも大きく毀損された。売上にも直接的な影響が出てくると思います。“牛丼を日常的に食べている人はシャブ中と同じ”と吉野家自身が言ったも同然ですから。
問題発言を行った早稲田大学の講座の授業料は、80時間で38万5000円(税込)だった。この金額も注目されたが、誰よりも高い勉強代を払ったのは、吉野家自身ということになりそうだ。