ニキビパッチはニキビに効く？効かない？皮膚科専門医が解説！

まとめ

「ニキビパッチ」はニキビの治療法として推奨されていない。
ニキビパッチをおすすめできる適切な科学的根拠は存在しない。
むしろニキビが悪化する可能性も！皮膚科に行って適切な治療法を選びましょう。

今話題の「ニキビパッチ」。韓国発祥とのことで、日本でも若い女性を中心に話題を集めています。
インフルエンサーがSNSで宣伝しているのを見たことがある方も多いでしょう。

ある有名な女性ファッション雑誌の記事によると、
“ニキビパッチとは、ニキビや赤みなど、あらゆる肌トラブルに対応したシールタイプのケアアイテム。貼るだけの簡単ケアで、理想の素肌に導いてくれます。貼っている間はメイクによる刺激もないので、ニキビの治りが早くなることも！“
とのことです。さて、これは本当でしょうか？

ニキビパッチをニキビに貼るべきか否か、皮膚科専門医が正しく検証してみます！

この記事を書いた医師

やさひふ

Yasahifu

医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士

Lumedia 編集長。怪しい医療情報に惑わされる患者さんを多く見た経験から Lumedia の立ち上げを決意。
皆さんのすこやかなお肌を守るため、Twitter で科学的根拠に基づいたスキンケア情報発信中。

ニキビパッチは治療法といえるか？

確立された治療法は、ガイドラインに書かれる

まず「ニキビに有効」と本当に証明されている治療法は、各国・地域の皮膚科学会がまとめている「ニキビ治療ガイドライン」で紹介されます。
ここで、日本、アメリカ、ヨーロッパの各皮膚科学会が公開しているニキビ治療ガイドラインをチェックしてみましょう。それぞれのガイドラインの本文内でニキビパッチに関する記載があるかを探してみたところ、以下のようでした。

日本：一言も言及なし (参考文献1)
アメリカ：一言も言及なし (参考文献2)
ヨーロッパ：一言も言及なし (参考文献3)

結論として、ニキビパッチはニキビの治療法として最初に行うものではありません。意外に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

ニキビパッチに関する論文

もう少し細かく見てみましょう。世界中の医学論文を検索できるPubMedというデータベースで、ニキビパッチに関する論文を探してみます。
“acne patch (ニキビパッチ) ” または ”acne dressing (ニキビ被覆) ” で検索すると、ニキビパッチの効果を調べてみたという報告が2本だけ見つかります (参考文献4, 5) 。

しかし、いずれの報告でも、ニキビパッチを貼った人が、ニキビパッチを貼らなかった人や通常のニキビ治療を行った人と比較して経過がより良くなることは示されていませんでした。
つまり、ニキビパッチによる純粋な効果は証明されていないということです。

そのため、これらの論文は残念ながらニキビパッチの使用を推奨する根拠にはなりません。つまりニキビパッチをおすすめできるだけの科学的根拠は、世界中のどこにも存在しないのです。
インフルエンサーやメディアがニキビパッチを勧める宣伝は残念ながら、科学的根拠によるものではないことがご理解いただけたでしょうか。

ニキビパッチのメリット・デメリット

ニキビパッチに良いところがないわけではない

最後に、ニキビパッチのメリットとデメリットについて原理的な面から考察してみます。

メリットは「ニキビに触らなくなる」ことです。
アメリカ皮膚科学会も、「自分でニキビをつぶすのは止めましょう！悪化したり、痕になったりするかもしれません。」と解説しています (参考文献6) 。早く綺麗に治したいなら、ニキビが気になっていじりたくなる気持ちをぐっとこらえてくださいね。ニキビパッチを貼ると指でニキビを直接触ることができなくなるので、その点ではニキビパッチを使うと治療にいい影響があると言えるでしょう。

一方、デメリットは「毛穴のつまりを悪化させるかもしれない」点です。
そもそもニキビは、「毛穴が皮脂などでつまる」ことから発生します (参考文献1) 。しかも、赤ニキビを引き起こすニキビ菌は空気が苦手なので、閉鎖空間にいる方が元気になります (参考文献1) 。ニキビのでき方については、以前投稿した「ニキビに本当にオススメの治療薬は？ニキビのタイプ別に効果的な薬の使い方を皮膚科専門医が解説」という記事でも詳しく解説しています。