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ジャック・ニコルソンの怪演は必見!! ティム・バートン版「バットマン」を観る!!

 DCコミックの代表的な作品である『バットマン』シリーズだが、アニメやテレビドラマに加え、多くのクリエイターと役者が参加して映画化されてきた。

 その最新作が2022年3月から公開されている『THE BATMAN-ザ・バットマン-』だ。バットマンは多くの小道具を駆使して戦うが、そのなかでも代表的なものが「バットモービル」。超高性能なバットマン専用車だ。

 今回はその個性的なデザインで歴代作品の中でも人気が高いバットモービルが登場する、ティム・バートン監督による『バットマン』をご紹介しよう!

文/渡辺麻紀、写真/ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント、Adobe stock

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■今に続くダーク&シリアスなバットマンを生み出したティム・バートン版

グレーの全身タイツから黒いアーマーとなったバットマンスーツ。ダークなストーリーにもマッチしている

 世界中で大ヒットを続けている、若きスーパーヒーローの成長を描いた『THE BATMAN-ザ・バットマン-』。本コラムでも取り上げたが、この『バットマン』シリーズが作られるようになったきっかけとなった作品を今回は紹介しようと思う。

 その作品こそ1989年製作の『バットマン』。これがアメリカでは社会現象となるほどの大ヒットを記録したことから、DCコミックの人気者、バットマンを主人公にしたシリーズが、監督や役者を代えつつ作られるようになった。

 その記念すべき最初の『バットマン』を監督したのはティム・バートン。大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』(2003)や『アリス・イン・ワンダーランド』(2010)等を手掛けた人気監督のひとりだが、彼のジャンピングボードとなった映画が『バットマン』でもある。

 当時のバートンは31歳。ディズニーアニメのアニメーターとしてキャリアを始め、本作のまえにオフビートなコメディ『ビートルジュース』(1988)を発表。これがスマッシュヒットを記録し、その個性的な美意識やダークなコメディセンスを買われて『バットマン』に大抜擢されたのだ。

 本作でバットマン/ブルース・ウェインを演じているのは、『ビートルジュース』でもバートンと組んでいるマイケル・キートン。ヴィランのジョーカーには名優のジャック・ニコルソン。オタクな監督として知られるバートンらしく、このふたりにオタクな性格をプラス。

 バットマンをネクラな引きこもりタイプ、ジョーカーを自分の価値観を人に押し付ける迷惑タイプのオタクとして描き、オフビートなコメディタッチのスーパーヒーローものに仕上げている。

 このふたりのキャスティングが発表されたとき、コミックファンの間からは不満が続出したものの、映画を観たら納得。キートンのエキセントリックな眼と社会に対する不適応具合、ニコルソンのダークなユーモアが満載された邪悪っぷりが素晴らしく、いままでにないバットマン像になっていたからだ。

 バートンの作ったこのネクラなバットマン像は、新作『ザ・バットマン』でもちゃんと引き継がれている。

 もうひとつ、引き継がれているのがバットマンのスーツ。本作におけるバートンの功績はたくさんあるのだが、なかでも画期的だったのはスーツをアーマーに替えたところだろう。

 それまでのバットマンと言えば布やスパンデックス等で作られたタイツ型のスーツだったのだが、バートンはカーボン製のアーマーに変更。これが今でも受け継がれているバットマンスーツの定番スタイルになっている。

 考えてみればバットマンは超能力をもたない生身のヒーロー。銃弾が当たれば大怪我をするわけだから、布のタイツよりアーマーのほうがいいに決まっている。劇中にも、銃弾を受けても起き上がるシーンが用意されていて、スーツの進化は一目瞭然……というか、やっぱりタイツ型よりダンゼンかっこいい。

■あのスーパースターも欲しがったバットモービル

悪趣味ギリギリのクールかつ絶妙なデザインのバットモービル。ギミックも満載

 そんなバートンが、もうひとつこだわったのがバットマンカーことバットモービル。

 バットマンスーツと同じようなカーボンで作られ、ペイントも同じように夜の闇に溶け込みやすいマットなブラック。無人走行が可能で、バットマンが呼べばすぐに駆け付けるし、バットマンの音声に反応して起動する仕掛けになっている。

 楽しいのはそのさまざまな機能。全体をクローム製のシールドで保護するのは珍しくはないかもしれないが、タイヤのホイールの部分から、昔の漫画でよく描かれていた真ん丸な爆弾をポトリと落としたり、車のボンネットの両側にマシンガンが装備されていたり、角を曲がるときは、飛び出したフックを鉄柱等に巻き付け減速なしでコーナリングしたり。

 カーデザイン自体は流線形を活かし、後部にコウモリのような羽根を施したクールなものなのだが、その車の特殊機能ひとつひとつの表現がコミックっぽいというかアニメっぽくて、車が能力を発揮すると同時についつい笑いが起きてしまう。

 クールな見かけとのギャップがバートンらしく、こちらも前代未聞のオフビートなバットモービルになっている。さすがに、この笑える要素は誰も受け継いではいないけれど。

 バットモービルの製作費は当時の金額で200万ドル(2憶8000万円)。全長6メートル、総重量は1.36トン。

 フロント部分のタービンエンジン、リアのブースター等は実際のジェット機の部品を使用し、デザイン的には1930年代のボンビネル・スピードウェイに参加したクラシカルなデザインのレースカーや、1960年代のシボレー・コルベット・スティングレイ等を参考にしたという。

 公開時の逸話には、あのマイケル・ジャクソンがこのバットモービルをいたく気に入り、100万ドルで譲って欲しいと申し出たというニュースもあった。

 プロデューサー側が出した条件は「続編に出演してくれたら」というものだったが、どうやら実現はしなかったようだ。ジャクソンも欲しがるようなクールなデザインだったということだ。

●解説●

 ゴッサムシティのギャング、ジャック・ネピアは有毒廃液タンクに落とされ怪人となって生還。ジョーカーと名乗り街を大混乱に陥れた。そこに登場したのはマスクを着けた謎の男バットマン。果たして彼の正体は!?

 DCコミックの人気ナンバー1のスーパーヒーロー、バットマンを主人公にした最初の映画は1966年の『バットマン オリジナル・ムービー』。

 これはTVシリーズの映画版で、バットマンを演じているのはTVと同じアダム・ウェスト。バットモービルもTV版の1955年型のリンカーン・フューチュラのコンセプトカーだった。

 それから22年後に作られたバートン版の『バットマン』から新生『バットマン』シリーズが始まるわけで、その続編として同じくバートンによる『バットマン リターンズ』(1992)、1995年にはヴァル・キルマーがバットマンを演じた『バットマン フォーエヴァー』、1997年にはジョージ・クルーニーがバットマンの『バットマン&ロビン』が作られた。

 ティム・バートンが外れてからは迷走が続いていたシリーズを立て直したのはクリストファー・ノーラン。『バットマン ビギンズ』(2005)から始まる『ダークナイト』3部作を手掛け、バットマンをよりリアルでダークなスーパーヒーローに作り替えた。

 ヒーロー同様、監督によってバットモービルも大きく違うので、ノーラン版もいつかこのコラムで紹介してみたい。

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『バットマン』
ブルーレイ 2,619円(税込)/DVD 1,572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
BATMAN and all related elements are the property of DC Comics TM & (C) 1989. (C) 1989 Warner Bros. Entertainment Inc. TM & (C) 1998 DC Comics. All rights reserved.

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