東京都渋谷区の小中学校の近隣や区役所前などで学生団体「日本自治委員会」がデモ活動を行い、平穏な業務遂行が侵害されたとして、渋谷区が東京地裁にデモ活動の差し止めを求めていた仮処分申請で、東京地裁が区の申し立てを認める決定を下したことが4日、明らかになった。決定は3月28日付。
また、デモ団体から自宅近隣で抗議活動を受けていた渋谷区の長谷部健区長も、個人として差し止め仮処分を申請し、合わせて認められた。
今回の仮処分決定により、区役所本庁舎や区立小中学校から約300㍍の近隣や、長谷部区長の自宅周辺で、拡声器を使用したり、大声で演説したりするなど、区や学校の平穏な業務遂行、および区長や家族らの平穏な生活環境を侵害する行為について禁止される。
公的機関や公人による異例のデモ差し止め申請は、デモ活動との表現の自由との兼ね合いから裁判所の判断が微妙との見方もあったが、今回の決定では、過去にデモ活動の規制を認めた仮処分の判例と同様、平穏に生活する人格権を侵害されたことなどを重視したとみられる。
学生団体によるデモは、渋谷区の五十嵐俊子教育長が、前職の町田市立小学校校長だった2020年11月、小学6年の女子児童が自殺したことへの対応を巡る抗議が発端。長谷部健区長の任命責任を含めて追及してきたが、渋谷区側は選任にあたり慎重な確認作業を行い、人事に問題はなかったと強調している。
また、女児が残した遺書の内容や、町田市教委が設置した「いじめ問題対策委員会」の調査から「いじめ以外にも原因があった可能性」(委員会報告書)も浮上しているが、団体側は昨年9月頃から今年1月末までで、区立小中学校前や長谷部区長の自宅前などの路上で少なくとも50回以上はデモ活動を敢行してきた。
区によると、昨年秋には小学校の運動会で「保護者が抗議したにも関わらず街宣活動が続けられ、子どもたちの楽しい思い出に水を差される事態」が勃発。区立小学校PTA連合会が2月、区に対処を要請する文書を出したことや、団体側がデモを強行に続ける姿勢も、区は勘案して仮処分申請を行っていた。
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